第3回 軒先換気とけらば水切りの施工
換気棟のハウゼコ
< 新建ハウジング掲載特集記事 3 >
前回に続き、軒やけらばの出が少ない建物における屋根換気のを扱う。
前回は全体像をお伝えしたが、現場をつぶさに追う機会を得たので、今回は施工の手順や細部の納まりのポイントについてお伝えする。
今回は、画像の①、②、③の箇所にある施工ポイントを解説する。
取材・構成:大菅 力 協力:ハウゼコ、齋藤組、大友
屋根換気は軒先から空気を取り入れて棟から抜くのが基本になる。
原理は単純だが、十分な換気量の確保と雨仕舞いを確実に両立させるには、正しい設計と換気部材の選定、正確な施工が必要となってくる。
特に軒の出が少なかったり、屋根形状が複雑になって各部位との取り合いが増えてくると、現場でどのように納めていくかということが大事になってくる。
換気部材や水切りの施工は屋根屋か板金屋が担当するが、屋根葺き材の施工と換気部材などの施工が別の職人になる場合、
納まりによって施工手順などが変わるので、管理者が能動的に動いて、三者でよく確認をしておく必要がある。
写真左:軒先換気部材の納まり。軒先の出が小さくなると、納まりの工夫が必要になる。
写真中:ケラバ水切りと軒先換気部材の取り合い。屋根のかたちが複雑になると納まりに工夫が必要になる。
写真右:軒先換気部材を下側から見たところ。水を切りつつ、換気が取れる形状になっている。
通気不良による結露事例が増加
今回紹介する軒先換気部材は、取り付け自体は特に難しいところはない。
強いて言えば段取りとして下葺き材の施工が先になるので、軒先換気部材を取り付ける際、下葺き材をめくり上げて野地板に釘留めし、その後に下葺き材を再度軒先換気部材に被せることくらいだ。
問題は事例のように屋根の形が複雑になる場合だ。
事例では軒先換気部材とけらば水切りが入隅で取り合うため、軒先換気部材の端部を塞ぐための役物の取り付け方に工夫が必要になる。
設計上はこうしたイレギュラーな箇所がなるべく生じないように標準化すると同時に、イレギュラーな納まりが発生する箇所は図面の段階で抽出し、職人と打ち合わせが可能なタイミングを図って現場に赴くべきだろう。
軒先換気部材の取り付け
● 換気部材と換気部材の間は専用役物を用いてシールと釘併用で納める
● 換気部材の端部は屋根勾配などに合わせて役物を加工し、シールと釘併用で納める
けらば水切りの納まり
● 胴縁を取り付ける部分は下葺き材を二重に敷いておき、下葺き材で胴縁を挟むように施工する
● けらば水切りと化粧スレートの取り合いはシーリングで接着とし、埃の堆積を防ぐ
片流れ屋根の棟換気
● 垂木の木口に下地となるスギ板を打ち付けて棟換気部材が取り付けられるようにする
● 棟換気部材と棟包み部材の取り合いは2重にシーリングを打って止水する