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「木造外皮内の通気を確保する手法と納まり」の記事がHeat&Environmentに掲載されました。

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特集「外皮内通気」
「木造外皮内の通気を確保する手法と納まり」

1.はじめに
石川廣三先生の本誌前稿によって、木造住宅の耐久性向上においては外皮内通気が重要な役割を果たすことが示されました。ですから、外皮には通気口や換気口が設けられたり、通気を確保するための工夫が施されたりすることになります。しかし、その際、通気口や換気口から雨や雪が浸入することを極力避けることも併せて必要になります。つまり、防雨性を確保した通気口・換気口が必要になります。普通に考えれば、雨の浸入を防ぐ材料や構造は空気や水蒸気の流通も防ぐことになってしまい、防雨性を確保した通気口・換気口は「矛盾」になってしまいます。また、通気経路は区画された外皮毎に確保しなければなりません。このような要求を実際の現場ではどのようにして実現しているのか、本稿では、防雨性を確保した通気口・換気口や通気を確保するための工夫について、現況を事例的に紹介します。
 なお、本稿では、「通気」と「換気」をほぼ同じ概念として使用しています。流入出する空気の量としては、「換気」の方が「通気」より大きそうなイメージがありますが、ここでは両者を特段に区別してはいません。したがって、「換気口」と言ってみたり、「通気口」と言ってみたりしていますが、空気の入れ換えを行う開口という機能は両者において同じです。ただし、「通気層」という言葉は使いますが、「換気層」という言葉は使いません。

2.通気経路の確保と通気口・換気口の設置位置
木造住宅において、外皮をどのように区画し、その区画された外皮ごとに通気口・換気口をどこに設ければ、スムーズな通気経路が確保されるのでしょうか。このような通気や換気の事例として、私たちに最も馴染みの深いものは、小屋裏換気と床下換気です。小屋裏空間あるいは床下空間の湿気を排出するために、外皮には換気口がいくつか設けられています。このような換気口は、木造住宅においてはずっと以前から当たり前になっています。
 さて、それでは外皮の他の部分についてはどうなのでしょうか。窓と床を除いたとしても、外皮には屋根や外壁があります。屋根について言うと、小屋裏空間が換気される屋根については問題がありませんが、屋根断熱の場合のように小屋裏空間を設けない屋根の場合にはどこに通気口を設ければよいのでしょうか。
また、外壁は気密性が低かった時代では特に通気は必要なかったのですが、断熱される場合は必ず気密性も要求されますので、気密化に伴って断熱層の外側で通気が要求されるようになりました。
 図1は、外皮に要求される、通気を確保するために設けられる通気口・換気口や通気のための工夫がなされる箇所を例示したものです。これは例示ですので、実際の場合には必ずしもこの図とまったく同じように設けることもありません。ここでの原則は、雨水や湿気が浸入する可能性がある外皮や、日射による高温によって水蒸気が放出される外皮はすべて、通気や換気によって水分が排出されるように、通気口・換気口を設けるということです。この原則が守られるのであれば、通気層の中に通気を遮断してしまうような物体がないか、通気経路を確認しつつ、通気口・換気口の位置を柔軟に決めればよいのです。
 このように通気ということを重視するのであれば、木造住宅の外皮は通気口・換気口が沢山付いているというのが普通であると言えます。もちろん、これらの通気口・換気口は既述のように防雨性が高いものでなければなりません。以下、図1に設置位置を示した、通気口・換気口と通気を確保するための工夫がなされる箇所について、代表的な納まりや部材を紹介します。

3. 外壁の通気と土台水切り
外壁の通気は、今では標準的に採用されていますので、外皮内通気の代表例と言えましょう。図1に示す通り、この場合は外壁の最下部(土台の高さ)Aに換気口が設けられ、そこが空気(外気)の入口になります。空気の出口は、軒天井換気口E、小屋裏換気口G、棟換気口F、下屋上のC、手すり壁上部のBになります。冷房の場合を除けば、外気より建物の方が温度が高くなりますので、建物の外気側では上昇気流が生じやすくなり(強風時は除く)、想定した通気が行われることになります。
 通気の入口の納まりについては様々なものがありますが、ここでは横張サイディングで且つ土台のねこ土台による床下換気を採用したときの例を図2と写真1に示します。土台を雨水から守るために水切りを取り付けるのは当たり前ですが、その水切りが床下換気のための防雨性の高い換気口も兼ねたものになっていることが、この水切りの特徴になっています。
ところで、「外壁の通気は標準的である」と申し上げましたが、このことは必ずしも正しいとは言えないようです。例えば、通気層を設けずに外壁をモルタルの直張りで仕上げたりすることがまだ行われているようです。浸入した雨水や湿気を速やかに外気に排することの必要性を啓発していく事が重要であると考えます。
 なお、通気の出口となる軒天井換気口と小屋裏換気口については、よく見かける部品ですので、一般的な納まりの図や写真の紹介は省略しますが、軒を張り出せない場合の通気確保の手法については後述します。

4. 手すり壁の通気を確保する納まり
最近では木造住宅でもルーフバルコニーが設けられますので、バルコニーに木製の手すり壁が付けられます。手すり壁でも木造外皮であれば、通気層が必要になります。ゆえに、手すりの笠木部分(図1のB)に通気口を設けることになります。図1に示すような建物であれば、外壁最下部Aが通気の入口であり、そこから流入した外気が出口のBで排出されるという経路がスムーズな通気を導くと考えられます。
 このような手すり壁の笠木の通気口として、図3のような納まりが提案されています。写真2は手すり壁の内部構造を見せるための写真です。新たに開発された笠木下換気材(板金+ハニカム材)が手すり内部の湿気を排出させる構造になっています。また、雨水がこの部材を通過して内部に浸入しにくい構造にもなっていて、この笠木下換気材は防雨性を高めた通気口であることが理解できます。なお、この手すり壁の納まりは、送風散水方式による漏水試験によって、本当に漏水量が非常に少ないことも検証されています。

5. 下屋の壁際の通気口
2階建て以上の木造住宅では下屋が設けられることがよくあります。この場合、下屋の屋根面と2階の外壁面は線(図1のC)で接することになります。両者は別の区画とすべき外皮ですから、この境界線において、下屋の屋根の出口用の通気口と2階外壁の入口用の通気口が必要になります。しかも、一般の外壁面などよりは風雨が強くなる箇所と考えられますから、防雨性には十分な配慮が必要になります。
 このような箇所(つまり、下屋の壁際)の通気を確保するための納まりとして図4のようなものが考えられています。下屋の屋根には出口用の通気口(入口は下屋屋根の軒天井換気口など)が、2階の外壁には通気の入口(出口は2階の軒天井換気口など)が設けられています。写真3は下屋の屋根の通気口で使われている板金部材です。雨水を浸入させずに通気させる構造になっていることが理解できます。

6. 軒を張り出せない場合の通気確保の手法
軒における換気は、軒を十分に張り出して軒天井に換気口(図1のE)を設ければ行うことができます。外壁の通気層を通る外気はここから排出されます。しかし、軒を張り出せない場合は軒天井が造れませんので、換気口を設けることはできません。このような場合の通気確保の手法として、二つの例を紹介します。
 一つは、屋根けらば(図1のD)における通気確保の対応策です。対応策としては、図5のように、防水けらばパッキンを使用して、防水に配慮しつつ通気経路を確保する納まりが考えられます。写真4はその納まりを分かりやすく示すものです。この納まりでは、外壁の通気層を通る外気はけらばから直接排出されるのではなく、換気材(プラスチック製)を通過して小屋裏空間へと導かれ、最終的には小屋裏換気口から排出される仕組みになっています。軒天井の換気口を設けられない場合の通気確保の手法として興味深いものがあります。
 二つ目は、図1のEにおける対応策で、軒天井を確保できない場合にスリット状の換気孔を取り付けて通気を確保した例です。図6と写真5にその納まりを示します。軒天井換気口のスポット換気とは違い、スリット状に配置されるので、奧行は、軒天井換気口の高さに比べて小さいのですが、総面積としてはスポット型の換気口と同等の面積が確保され、同等の通気量が確保できるものと思われます。

7. 今後の課題と発展
木造住宅では、断熱の進行と共に外皮の通気にも関心が高まりましたが、外皮内通気に関する定量的な研究はそれほど行われてきたわけではありません。経験として通気が良さそうだと考えている人が多いのですが、防雨性の高い通気確保の方法と通気の効用について完壁な状態であるとはまだ言えないわけです。
 外皮内通気という手法が木造住宅の耐久性向上に有用であり、建築物のライフサイクルコストやライフサイクルCO2におけるパフォーマンスの向上の観点からも必要であることを社会に浸透させるためには、今後も多くの地道な研究や社会活動が必要です。加えて、研究開発などがさらに進めば、通気・換気のための部材・部品や納まりなどについても改良や新たな発展が期待でき、この分野の発展と社会的認識の向上につながるものと思われます。

[参考文献]
1) 大西祥史ほか:バルコニー手すり壁笠木周りの防水性に関する一実験、日本建築学会大会講演梗概集、2013、A-1分冊、pp787。