小屋裏換気とは
近年の住宅トレンドと小屋裏換気の問題点
1、屋根の形状
近年、意匠重視の風潮の中、屋根形状が多様化している。屋根形状は、寄棟・入母屋から切妻・片流れへシフトしているが(Ⅰ-1参照)、このことは、シンプルモダンの意匠の流行と太陽光発電の設置に有利な事等によるものである。
(出典:住宅金融支援機構フラット35住宅仕様実態調査報告平成29年度、以下図Ⅰ-2~5も同じ)
最近増加傾向のキューブ型住宅に多く使われる三方パラペット屋根は片流れにカウントされていると思われる。住宅金融支援機構の小屋裏換気基準には、それぞれ適用する屋根形状の例が示されているが、片流れ屋根と四方パラペットの陸屋根は示されていないため、基準の適用に関して実務上混乱を招いているきらいがある。
片流れは、屋根勝ちにして軒の出を出した場合は、軒裏から吸排気する場合が多く、住宅金融支援機構の小屋裏換気基準(ロ)の軒裏吸排気1/250が適用される。この場合水上側で軒裏吸排気をとると、雨水侵入リスクが高く、屋根と壁の交点で片流れ換気棟を設置したほうが、雨仕舞上の問題が起こりにくい。
壁と屋根の交点に片流れ屋根換気棟を設置する場合は、同(ニ)の吸気1/900,排気1/1600が適用される。三方パラペットは、片流れ屋根とパラペットの取り合い部の雨押えで換気をとることが多く、同様に吸気1/900,排気1/1600が適用される。水下側の軒裏でとる場合は、1/250が適用される。
四方パラペットは、小屋裏の壁で換気する同(イ)の1/300以上の基準を使う以外に方法は無いのだが、意匠上それだけの換気面積を確保することは難しいため、屋根断熱の特例を使って小屋裏換気を逃れているケースが多い。屋根断熱は断熱層上部での結露発生事例が多く、キューブ型デザイン住宅の劣化リスクが高い要因となっている。基準上はクリアしていても、適切な換気部材を使い、通換気経路を確保して、構造躯体の劣化を抑止しなければいけない。
最近増加傾向のキューブ型住宅に多く使われる三方パラペット屋根は片流れにカウントされていると思われる。住宅金融支援機構の小屋裏換気基準には、それぞれ適用する屋根形状の例が示されているが、片流れ屋根と四方パラペットの陸屋根は示されていないため、基準の適用に関して実務上混乱を招いているきらいがある。
片流れは、屋根勝ちにして軒の出を出した場合は、軒裏から吸排気する場合が多く、住宅金融支援機構の小屋裏換気基準(ロ)の軒裏吸排気1/250が適用される。この場合水上側で軒裏吸排気をとると、雨水侵入リスクが高く、屋根と壁の交点で片流れ換気棟を設置したほうが、雨仕舞上の問題が起こりにくい。
壁と屋根の交点に片流れ屋根換気棟を設置する場合は、同(ニ)の吸気1/900,排気1/1600が適用される。三方パラペットは、片流れ屋根とパラペットの取り合い部の雨押えで換気をとることが多く、同様に吸気1/900,排気1/1600が適用される。水下側の軒裏でとる場合は、1/250が適用される。
四方パラペットは、小屋裏の壁で換気する同(イ)の1/300以上の基準を使う以外に方法は無いのだが、意匠上それだけの換気面積を確保することは難しいため、屋根断熱の特例を使って小屋裏換気を逃れているケースが多い。屋根断熱は断熱層上部での結露発生事例が多く、キューブ型デザイン住宅の劣化リスクが高い要因となっている。基準上はクリアしていても、適切な換気部材を使い、通換気経路を確保して、構造躯体の劣化を抑止しなければいけない。
写真Ⅰ-1 キューブ型住宅(築1年)の屋根断熱の事例
2、ルーフバルコニーの有無
換気条件がパラペット付き屋根と共通する部位として、ルーフバルコニーがある。2Fにアウトドアリビングを設ける等、意匠・機能両面からの顧客ニーズが高く、約半数の住宅に設置されており、増加傾向にある。
ルーフバルコニーの床下、手すり壁は、結露・雨漏り事故の多い場所なので注意が必要である。小屋裏(床下空間)の湿気を、手すり壁の通気層を経由して外気へ排出するシステムは、耐久性上の一定の効果はあるが、小屋裏換気方式としては認められていない。
3、小屋裏換気方式
図Ⅰ-3 小屋裏換気方式の変化
小屋裏換気方式に関しては、屋根断熱を採用して小屋裏換気を行わない住宅の増加が著しい。屋根断熱は小屋裏換気基準の対象外になるため、屋根層内に適切な通気経路が確保されていないケースも多く、結露リスクが高くなる。次に多いのが軒裏吸排気であるが、湿気は、小屋裏の頭頂部に集まるため、換気効率はあまり良くない。軒裏から吸気し、棟あるいは妻壁上部から排気する方式は、換気効率の点で望ましいとされるが、ここ10年間でほとんど採用率が伸びていない
4、屋根葺き材
屋根ふき材は、鋼板屋根の割合が約4割に増加していることがわかる。鋼板屋根は、熱伝導率が高く、夏の日射や冬の放射冷却による温度変化を直接野地板に伝えるため、換気や通気が不十分な場合、
日射による夏型結露や放射冷却による冬型結露のリスクが高くなる。木造住宅従事者には、鋼板製屋根材についての知見が乏しい場合も多く、トラブルの増加要因になっている。
図Ⅰ-4 屋根葺き材の変化
5、軒の出の長さ
軒の出の長さは、年々短くなり、現在の住宅の約30%が40cm未満の軒の出の長さである。
図Ⅰ-5 軒の出寸法の比率(平成29年度、全国)
軒の出が短いと、壁面の雨がかりが増し、また軒下部の換気口の雨仕舞が難しくなる事によって雨漏りや結露事故が多くなるリスクがある。
以上、フラット35融資住宅のアンケート結果から、最近の10年間で顕著な変化が見られた項目を挙げると、①屋根形状は、片流れが12%から30%、②小屋裏換気孔の設置方法は、屋根断熱が16%から38%、➂屋根葺き材は、鋼板屋根が14%から37%に増加している。また、平成29年度については軒の出は、約3割が40cm未満、ルーフバルコニーの設置率は、約50%となっている。
6、まとめ
最近の住宅トレンドを一口で言えば、片流れ(三方パラペット)の鋼板屋根で、ルーフバルコニーがあり、軒の出が少ない、屋根断熱の住宅である。
つまり、それぞれの部位で、小屋裏換気が難しく、結露リスクが高くなっており、これらのトレンドの背景にあるシンプルモダンや勾配天井のロフト空間などのデザイン志向が、耐久性上のリスクの高い住宅の割合を増やしていると言える。
小屋裏換気(屋根換気)とは 最近の住宅は、在来木造住宅においても気密や断熱性能が著しく向上しています。その結果、小屋裏(屋根裏)内部での結露の発生が大きな問題となっています。結露すると梁や垂木、野地板等の構造体の腐朽による耐久性能の劣化や、断熱材の濡れによる断熱性能の低下、カビの発生等をもたらすことになります。写真は、夏の屋根裏の温度をサーモグラフィーで撮影したものですが、夏の屋根裏は暑いときには60℃近くに達します。太陽に熱せられた屋根材が高温になり、その直下にある小屋裏が熱気や湿気が滞留しやすい空間になります。この熱気や湿気を滞留させないために設置するのが「小屋裏換気」です。住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書の基準では、屋根断熱といわれる屋根裏面に直接断熱材を仕込む断熱方式の場合は、小屋裏が室内空間扱いとなり小屋裏の換気措置は必要ではなくなりますが、天井裏に断熱材を敷き込む天井断熱方式の場合には必須の換気システムです。 写真-1 屋根裏のサーモグラフィー 図-1 天井断熱と屋根断熱 天井断熱における木造住宅の小屋裏空間には、室内や外気からの湿気・その他木材やコンクリートの初期放湿などにより、建物内外の温度差による結露が発生し易くなります。その結露水が原因で、カビの発生や構造材を腐らせる原因となります。 小屋裏換気により小屋裏空間に滞留する湿気を希釈することで、湿気の飽和状態を抑制し結露を防ぐ目的が「小屋裏換気」であり木造の耐久性向上に不可欠な仕組みとされています。しかし、小屋裏内の結露やカビが発生する事故は、後を絶ちません。 図-2 天井断熱の場合の換気経路 小屋裏の結露事故の多くは、小屋裏換気の設置方法や換気(通気)経路の欠損が原因とされています。結露によって断熱性能が損なわれ、構造木材の腐朽につながります。 熱気や湿気の排出を目的として開発された「小屋裏換気」においては、小屋裏内の空気が十分に流れるように適切に設ける必要があります。効率よく湿気を排出するためには、換気棟の設置位置に注意しなければなりません。中央部分に集中的に配置すると換気棟から遠い部分の湿気は、排出に時間がかかり、結露リスクが高くなってしまいます。換気棟の配置は、バランスよく配置する事で結露リスクの危険性が低減されます。 また、屋根断熱に関して、前述の住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書の基準では、小屋裏換気孔を要さないと記載いたしましたが、弊社では、小屋裏換気孔は必須であると考えています。木材の初期放湿や居室からの湿気によって結露が生じる可能性があり、その湿気を排出しなければなりません。そのためには、小屋裏換気孔を設けないと排出できません。屋根断熱の結露事故の多くは、換気(通気)経路の欠損が原因とされています。軒先からの吸気や換気棟の無設置、断熱材のせり出しが通気経路を阻害し、湿気の滞留場所となり、結露を発生させる現象が起き易くなります。垂木間ごとに、換気・通気経路をチェックし、垂木間毎の換気棟の設置や、頭頂部の垂木カットを行い、通気経路の確保に努めなければいけません。 図-3 屋根断熱の場合の通気経路例 小屋裏換気孔の設置例 この「小屋裏換気」の具体的な技術規準は建築基準法では規定されていませんが、品確法における「劣化軽減措置」の一つに、小屋裏換気の仕様が評価基準として住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」を基にした小屋裏の換気必要面積の最低基準として規定されています。換気方法には、棟換気・妻換気・軒裏換気などの組合せにより小屋裏の天井面積に対して吸気口及び排気口の有効換気面積が求められています。 【有効換気面積】(※品確法・木造住宅工事仕様書に準じています。) 小屋裏換気孔は、独立した小屋裏ごとに2ヶ所以上、換気に有効な位置に設ける。 換気孔の有効換気面積は、下記のいずれかの内容とする。 ①(妻換気形式) 両妻壁にそれぞれ換気孔(吸排気両用)を設ける場合は、換気孔をできるだけ上部に設けることとし、換気孔の面積の合計は、天井面積の1/300以上とする。 ②(軒裏換気形式) 軒裏に換気孔(吸排気両用)を設ける場合は、換気孔の面積の合計を天井面積の1/250以上とする。 ③(軒裏換気・妻換気併用形式) 軒先に吸気孔を設け、小屋裏の外気に接する壁面に排気孔を設ける場合は、垂直距離で900mm以上離してそれぞれの換気孔の面積を天井面積の1/900以上とする。 ④(棟換気形式) 軒裏又は小屋裏の壁のうち、屋外に面するものに吸気孔を設け、かつむね部に排気孔を設ける場合、吸気孔の面積を天井面積の1/900以上とし、排気孔の面積を天井面積の1/1600以上とする。 図-4 小屋裏換気口の設置例 【効率的な設置方法】 「換気棟・軒先換気」を取り付けると、温度差による自然換気の働きで、湿気を含んだ空気や小屋裏の熱気を効率よく排気し、冬期の結露や室温の上昇を防ぎます。 効率よく湿気を排出するためには、換気棟の設置位置が注意しなければなりません。中央部分に集中的に配置すると換気棟から遠い部分の湿気は、排出に時間がかかり、結露リスクが高くなってしまいます。換気棟の配置は、バランスよく配置する事で結露リスクの危険性が低減されます。 また、近畿大学との共同研究「換気役物の小屋裏換気性状に与える影響に関する研究」で換気役物の換気量を確認した結果、【換気棟-軒先換気】は、【軒先換気のみ】の2倍以上に増加させることが示されました。このことから、【換気棟-軒先換気】は、効率的な換気方法であるということがいえます。
ハウゼコでは屋根形状や屋根葺き材に合わせた高効率な換気部材を用意しています。空気の入口・出口に設置する換気部材は、スムーズな空気の流れと雨水の浸入防止のために数々の試験を行い、バックデータを備えた製品群です。小屋裏換気の提案で住まいの長期耐久性を実現します。