社長コラム
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関西サイディングニュース7月号掲載

社長コラム

5時間に及ぶ吉本興業の社長会見が波紋を呼んでいる。吉本の芸人のコメントを見ていると、大御所池野めだかを筆頭とする新喜劇所属の劇団員や、巨人阪神ら関西のベテラン漫才師は概ね問題なし。今回の事件に対する不満の中心は、東京吉本に所属する若手中堅芸人という特徴がある。
東京吉本の歴史は古く、明治45年創業の吉本興業が、大正11年に東京(浅草花月他)へ進出し、昭和21年に独立。その後東京吉本は、隆盛を見せるも昭和40年に倒産。昭和55年、漫才ブームとともに大阪吉本が再進出した。その時のトップが木村元常務、部下が大崎洋現会長だった。その後、極楽とんぼなど数多くの人気芸人を輩出した。大阪の新喜劇や花月所属の芸人は定期収入が見込める為、住宅ローンを組みやすいのに対し、テレビ等が主戦場の芸人は浮き沈みが激しいので、そこそこ売れていても住宅ローンすら組みにくいらしい。今回の問題には、東西の派閥対立や利益配分への不満が根底にあるようだ。
 かくいう私も学生時代、吉本の芸人とコンビを組んで司会のアルバイトをしていたことがある。当時はギャラ1万+祝儀というのが相場だった。闇営業というが、ほとんどの食えない芸人は、当時から司会やウェイター等の『副業』で生活をし、そのお店で知り合ったお客さんやタニマチに呼ばれて食い扶持を得るのが一般的だった。大阪では、素人の方が見た目や仕草が怖かったりするので、『反社』かどうか見極めるなんて不可能に近い。第一、こちらから営業した手前、後から『反社ですからお断り』なんて言えるわけがない。ましてや、そのようにして得たイベント等の仕事の経験でも芸を磨く貴重な機会となる。そのルートを絶たれてしまったら、若手は収入も芸もいつまでたっても上げることができない。吉本興業は、様々な個性の受け皿として社会的意義は非常に大きなものがあったと思うが、政府関係の仕事にまで手を広げすぎた為に、本業の芸人の気持ちがわからなくなってしまった。切らなければいけないのは、政府関係の仕事であって、芸人ではないと思う。